【材料】TP340(チタン)について【新人社員向け】

実装組立ソリューション
五十嵐
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前回のブログでフローパレットについて解説した際に一覧のみだった取り扱い材料について、その特性や切削加工時の条件を解説してきたいと思います!

今回は【チタン(titanium)】についてです。

チタン(titanium)

チタン(titanium)はギリシャ神話の巨人(タイタン)がその名の由来となり、強靭さと耐久性を表してるそうです。

チタン材料の特徴
  • 鉄の約2倍、アルミの約3倍の強度
  • 鉄の約60%の比重(重さ)
  • ステンレス材、アルミ材に比べ耐食性・耐熱性に優れてる
  • 人体へのアレルギー反応が少ない
  • 熱伝導率がステンレスと同様に低い
五十嵐
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チタンはアレルギー反応が少ないことから歯のインプラントや、人口骨など医療分野でも活躍している素材です!

はんだ付けパレットの加工におけるチタンの優位性

チタンはその特性のため、航空宇宙産業では構造部材やエンジン部品に広く使用され、自動車産業でも重量を軽減するための部品材料として重宝されています。また弊社のはんだ付けパレットの加工においてもその優位性を発揮できます。

チタン材を使用したDIPパレットのメリット
  • 耐熱樹脂製に比べ強度・高精度の加工が可能
  • 薄壁の加工が可能
  • 低い熱伝導率のため、はんだ付け性がUP
  • はんだへの耐腐食性に優れてる(長寿命)
  • 耐久性と品質を重要視するはんだ付けパレットに適している

チタンは熱により膨張しにくい

チタンの熱による膨張はステンレス(SUS)の約2分の1アルミの約3分の1と、膨張しにくいという特性は基板実装工程のはんだ付けパレットの品質において優位に働きます。

例として100mmの棒が10℃上がると、下記の分だけ伸びます。

  • チタン(TP340)…0.0084mm
  • アルミ(A5052)…0.0238mm
  • ステンレス(SUS303)…0.0187mm

熱での伸縮量は、意外と簡単に計算することができます。

熱による伸縮量の計算式

伸縮量(mm)=長さ(mm)✕下表の線膨張係数✕温度の変化量÷1000000

材料条件線膨張係数[10-6/K]
チタン(TP340)8.4
アルミ(A5052)20~100℃23.8
100~200℃24.8
アルミ(A2017)20~100℃23.6
100~200℃23.9
アルミ(A7075)20~100℃23.6
100~200℃24.1
ステンレス(SUS303)0~100℃18.7
弊社の主な取り扱い材料との比較です
五十嵐
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また温度変化による寸法変化値についてどのくらい伸縮するかは計算できるサイト(湯本電機㈱)があります。ぜひ参考にしてみてください!

熱伝導率が低いので冷めにくい

チタンの熱伝導率はステンレスとほぼ同等です。熱伝導率が低いので、1度温めると冷めにくく、温度を維持しやすいのではんだ付け性(はんだ濡れ性)がUPします。

材料熱伝導率[W/m℃]
チタン(TP340)17
アルミ(A5052)130
アルミ(A2017)137
アルミ(A7075)130
ステンレス(SUS303)16.3
弊社の主な取り扱い材料との比較です

はんだ付けにおいて、はんだは冷める(常温に戻る)と固まってしまうのでパレットが熱いうちにはんだ付けを完了させる必要があります。そのため、はんだ付けパレットの材料は熱伝導率が低いほど良いとされています。

はんだフラックスへの耐腐食性がある

はんだ付後のフラックスの残渣ざんさは金属に対して腐食性を持っています。
プリント基板のプリント基板上の銅導体,部品リード,チップ電極などをはじめ、フラックス中の活性剤がイオン化し、金属を腐食することで絶縁抵抗劣化を引き起こします。

それははんだ付けパレットに使われる金属も同じで、金属が腐食する原因にもなりますが、チタンは耐腐食性に優れ、長寿命です。
チタンは海水中では、白金(プラチナ)に匹敵する耐食性を発揮、他の主要金属(ステンレス、アルミ、銅など)より優れています。

はんだ付けパレットのフラックス洗浄は弊社オリジナルECO洗浄剤エコフラッシュαがおすすめです。

エコでお得!チタンの経済性

チタンとステンレスの比重

重量当たり単価は鉄・ステンレスより高価ですが、低比重のため体積当たりの差は軽減されます。

また、高比強度・高耐食性によりメンテナンス費用の軽減によるライフサイクルコスト低減も考慮すると、コスト面でも十分なメリットがある材料と言えます。

基板実装においては可搬重量を超えてしまうため、耐熱樹脂を組み合わせて使用する等の工夫が必要です。

チタン材のデメリットと加工の注意点

チタン材の切削加工時のデメリット
  • 強度が強く、切削工具の消耗が激しい
  • 低い熱伝導率のため、加工に時間がかかる
  • 化学反応により切粉が火災発生の原因になる
  • 低ヤング率のためびびりが発生する
  • 低ヤング率のため加工中に変形する

チタンは先で挙げた強度、重さ、コスト、環境のメリットがある一方、デメリットとして加工の難しさが挙げられます。強度が高く、工具の消耗が激しいのと、熱伝導率が低いので、硬い切削工具でも切削加工中に高温になり軟化しやすいです。また熱伝導率が低いのでチタンの切削加工中に発生した熱が全体に伝わりにくく、高温になりやすいので化学反応が起き、切粉が火災発生の原因にもなります。

チタンはステンレス、鋼と比べヤング率が低いので、ばね特性(しなりやすい)があり、切削加工時にびびりが発生しやすく、工具にかけられた力に対して材料自体が変形しやすので加工精度が低下します。それ故にチタンは金属の中では難削材に分類されます。これを考慮したうえでの加工条件を設定する必要があります。

ヤング率が低いとは?

ヤング率が低い材料に力をかける→力を除外するとどうなるかは消しゴムをかける動作の際に消しゴムがどのように変形するかを想像してもらえると分かりやすいです。

ビビりが発生した際の加工対策
  • ビビリが起きにくい剛性が高いツール、工具の選定
  • CAMプログラムの工夫
  • 粗加工の調整
切削加工中に高温になってしまう時の対策
  • 加工速度を遅くする
  • 切削油を使用し、冷却溶着対策をする
  • 「高温に強い」「摩耗に強い」切削工具を使用する
  • 連続加工せずに定期的に材料と切削工具を冷やす

まとめ

五十嵐
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いかがでしたでしょうか?

チタン材は加工が難しい一方で、耐久性があり、温度が維持しやすいので基板実装用のはんだ付けパレットの材料に適している事が分かりました!

株式会社PICSISではチタン材を使用したDIPパレットの加工も行っております。

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